Right Riot | 邦楽、サッカー、映画、猫などが好きなfkdが好き勝手に綴るブログ › samidare-makishi › 【さみだれマキシ】第51話「アベとフジー編その2:富間甲」
2009年11月08日
【さみだれマキシ】第51話「アベとフジー編その2:富間甲」
【さみだれマキシ 十一部】第51話「アベとフジー編その2:富間甲」
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アベとフジーの距離はそれほどなかったが、
アベがフジーのもとにつくころには、
竹保の街の半分が焼失していた。
「おい、クソ野郎が。同じ富間甲でこんな外道が育ったなんて、
本当に信じられねえぜ。お前は必ず殺す」
アベの声はかつて聞いたことがないほど
憎悪と怒りに満ち溢れていた。
フジーは嫌味をたっぷり込めて返事をした。
「おやおや、これは爆弾を作りだしたアベさんのご子息ではないですか。
どうですか、私がその後パワーアップさせた爆弾は?
ヒトを殺すための最高の道具ですよこれは!
大したものです、あなたの父は!ハッハッハッハ!」
「…」
アベとフジーは同じ富間甲出身で、
昔からの顔見知りであった。
そして、アベの父・ベーアーこそ、
マジネッチョリで爆弾を生み出したその人であった。
火すら焚くのに時間をかけていたこの時代、
マジネッチョリには当然爆薬もなかった。
富間甲で最も薬学の知識があったベーアーは
様々な薬品の開発をしてきたが、
非常に作成と取り扱いが難しいとされる爆薬すら生み出していた。
話はアベの過去にうつる。
ベーアーが爆弾を開発した頃の話だ。
爆薬というあまりにも危険な物を作ったことによって、
ベーアーは街で危険人物として扱われ、
ベーアー一家は街から追い出されてしまった。
火には神が宿るとされていた時代に、
爆薬の開発は画期的すぎたのだった。
アベは危険人物の息子として何の理由もなくいじめられた。
楽しい子ども時代を送ってきたとはお世辞にも言えない。
しかし、アベは父の仕事を尊敬していた。
爆弾は使い方を誤れば一瞬でいくつもの命を奪ってしまうが、
使い方によっては非常に役に立つものだと知っていたからだ。
例えば、現在でも工事にはダイナマイトなどの薬物が使われたりと、
爆弾は大きな役割を果たしている。
実際に富間甲は山奥の閉ざされた街で、
近くの栄えている街にいくためには
険しい山道を歩いて1か月もかかるようなへんぴな場所であった。
しかし、アベの父が開発した爆弾で道を切り開いたおかげで、
平坦な道を数時間歩くだけで隣町にいけるようになったのだ。
往来が活発になり街が栄え、生活も一気に豊かになった。
アベは学校にも行けずにいたため、
家でベーアーと薬の研究をずっと一緒にし続けていた。
母譲りの優しさと強さ、父譲りの頭脳と探究心によって、
ベーアーが死ぬ1年前、18の時には既にベーアーの知識を全て習得し、
むしろ父の知識を上回るようにまでなっていた。
村民は爆薬の恩恵を受けながらも、
ベーアーを意味もなく迫害し続けた。
その原因は誰かのせいにしないと生きていけない、
人間の弱さ意外の何物でもなかった。
アベ19歳の年のある日。
村人は十分な生活水準が得られるようになると、
何の罪もないベーアー夫妻をついに殺してしまった。
もはや村民たちは引くに引けなくなっていただけだった。
しかし、ベーアーもアベも迫害する富間甲の民を憎むことなく、
ただ時代が間に合ってないのだと理解し、
我が道を進み続けたのだった。
アベの父は、文句なしに素晴らしい人物だった。
そしてあれから数年経った今。
誰よりも尊敬する父の発明が殺人道具にだけ利用されている。
その事実に、アベは怒り震えていた。
爆弾を作った人間を軽蔑していたのは、
別に時代が間に合っていなかったわけではなかったのだ。
扱う人が変わらなければ、
いくら年月が経っても何も変わらないのだ。
アベは、今になってようやくそれに気付いた。
いや、気付かないふりをしていたことに気付いたと言った方が
正しいかもしれない。
次回へ続く。
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