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2009年08月30日

【さみだれマキシ】第21話「荒剣対クドゥー」、第22話「輪(和)」

【さみだれマキシ 四部】 第21話「荒剣対クドゥー」



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荒剣には、こんな修羅場は何度もくぐり抜けてきた経験があった。
荒剣には、何より負けられないという誰にも譲れない意地があった。
意思は脳を活性化させ、限界以上の力を発揮させる。
荒剣はいつもそうやって壁を乗り越えてきた。

しかし今回の壁はいつもより遥かに高い。
いくら助走しても届かないかもしれない。


だが荒剣の意思は折れない。
勝てる見込みの少ない勝負だが、荒剣は舞鶴を振り続けた。
しかし、今日の舞鶴は空気を切り裂くだけだった。

一方、クドゥーの攻撃は容赦なく荒剣を痛めてつけていった。
すでに荒剣は気力だけで立っている程であった。
荒剣はそれでも立っていた。

「そんなになってまで何故立つ!?
 大人しく死ねばいいものを!阿番の為か?誇りか?」
「チッ、そんなものの為ではない!」
「では何だ!」

荒剣は数分の沈黙の後、いつもより小声で話し始めた。

「…日常だ」

「日常…?」

「てめえには日常はあるか?日々無駄な時間を過ごしているのに
 気付かないだけじゃねえのか?孤独に気付いていないだけだ」

その言葉に急にクドゥーは激怒した。

「…うるせぇ!俺は孤独でいいんだ!日常なんかいらねぇ!」
「てめえは気付いていんだろ?あの阿番の日々で。迷ってんだろが、
 進むべき道がどっちなんだ、ってな」

クドゥーは黙りこんだ。微動だに出来なかった。
荒剣の言葉は実に的を射ていた。
クドゥーは動揺を隠せなかった。

「クドゥー、てめえは気付いているだろう、あの阿番での日々で」
「………」
「今なら遅くねぇ、今なら満ちたりた日常に戻れるんだ。
 大事なのは失わないことじゃねぇ、得ることだろが。
 そして得るものを選ぶことだろうが」


「うるさい、黙れェェェ!」


その時クドゥーの中で何かが壊れた。
クドゥーは孤独だった。
両親を戦争で早くになくしてから今まで、剣技だけが頼りになっていた。
そんな日々が嫌でたまらなかったのだった。
それに気付かぬ振りをしていただけだった。

クドゥーが正気を取り戻した時、既に荒剣の胸を剣で一突きしていた…。
荒剣の胸から背中に剣がささり荒剣は大地に倒れ伏せた。

「な、なんてことを…す、すまない荒剣…」
「チッ、いちいちあやまんじゃねえ、だがてめえは阿番に戻れ…」
「……」

クドゥーは沈黙で静かに頷いた。
荒剣の息はもう絶え絶えになっていた。



【さみだれマキシ 四部】 第22話「輪(和)」



ちょうどその時、阿番から必死に追ってきたマキシとアベが追い付いた。

「遅かったか…」

マキシはその凄惨たる光景に落胆した。

「いや、まだ息がある!」
アベは荒剣に息があるのを見るやいなや、
すぐに驚異の手捌きで治療しはじめた。
こんなこともあろうかと、治療器具を用意してきたのだった。

用意した馬に急いで荒剣とクドゥーを乗せ、猛スピードで阿番へと帰っていった。
その帰り道の中、クドゥーはずっと荒剣を見ていた。

阿番に帰った後、荒剣は必死の治療によってなんとか一命をとりとめた。
クドゥーの剣は迷いで僅かにぶれ、
荒剣は致命傷を避けられたのだった。

もちろん盗んだものは全て返却された。
そしてクドゥーは再び阿番の将軍に戻った。
今後は阿番に尽すという条件でアルはこの件を不問にしたのだった。

この出来事で阿番な絆は更に深まった。
これもアルの狙いであった。
竹保と赤国に足りないもの、それは信頼と安定である。
アルはその弱点を突こうとしていた。
そして信頼が厚くなった今、その準備は整いつつあった。

ついにマジネッチョリ制圧を賭けたの闘いは佳境を迎える。
この先一体どうなるのか?それは神のみぞ知る。

一つだけわかるのは、
歴史はいつも思わぬ形で姿を変えていくということだけだ。



第四部・完


次回に続く。


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