【さみだれマキシ】第31話「必要」 | Right Riot

2009年09月10日

【さみだれマキシ】第31話「必要」

【さみだれマキシ 六部】第31話「必要」



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わずか5分弱であったが、濃密な勝負であった。
ここまでマキシが追い込まれたのは稀であった。

マキシはとどめをささず、
すぐに息絶え絶えのニッタに解毒剤を飲ませた。

ニッタは自ら得意な場で、得意の戦法で負けた事により、
既に戦意を喪失していることは火を見るより明らか。
解毒させ動きがとれるようになったところで、
襲ってくることはまずないだろう。

それよりも、マキシを追いこむほどの戦術を生み出す知恵と、
それを実行できる技術を持ち合わせたニッタが必要だと考えたのだ。


「ニッタよ、ここで意味もなく朽ち果てるより、
 阿番で武将になることを選べ」
「な・・・なんだと?武将としての誇りをうち砕かれた上に、
 人間としての誇りをも捨てろと言うのか?」

マキシは一呼吸おいて話し始めた。
「ニッタよ。人間は生きること自体が誇りなのだ。
 死ぬことが最も誇り無き行為だ
「・・・」

マキシは、モウ・リーにも同じことを伝えたのを思い出した。
このマジネッチョリ大陸には、
誇りを言い訳に命を投げ出したがる輩が多すぎる。

マキシは少し苛立ちを感じた。

「ニッタよ。お前ほどの頭脳と力があれば阿番の人々を幸せにできる。
 おそらく、竹保の幾人がお前の力によって幸せになってきただろう。
 今度は阿番の民を幸せにしてほしい」

実際に、ニッタの考え出した「合同集会」(今で言う合コン)は、
多くの男女交際を発展させ、様々な幸福の形を生み出してきた。

これはこのお堅い時代において画期的なアイデアであり、
婚姻率を大幅に上昇させた。

おそらく今後は子どもが増え、
国にさらなる活気と繁栄ををもたらすことだろう。

「闇間」も一見非常識に思えるが、
実によく練られた素晴らしいアイデアであり、
マキシもあそこまで追い込まれたのは実際に数年ぶりのことであった。
戦いながら、ニッタの突飛なアイデアは、
阿番においても絶対に必要だと確信した。

「ニッタよ。そなたの力がどうしても欲しい。力を貸してくれないか?」
「・・・アリ」

ニッタはこんなにも必要とされたことはなかった。
竹保においても、国がなくなり仕方なしに登用されるしかなく、
「合同集会」などの素晴らしいアイデアも、
居場所をつくるために受動的に考えたものだった。
しかし、あまりに突飛過ぎるアイデアが多かったため、
頭が少しおかしいと評価されてしまい、逆に居場所を失いつつあった。

こんな自分を評価してくれるなんて…
ニッタにとって、マキシのこの言葉は今なによりも欲しい言葉であった。

マキシは黙ってさらに奥へと進みだした。
ニッタも、黙ってマキシの後ろを歩みだした。
阿番にまた一人、強力な武将が加わった。


残すはタケーマタ・フークダの2武将のみ。
しかしマキシはニッタ戦において多くの傷を負ってしまった。
味方になったニッタも、毒の影響かまだ完ぺきには動けない。
満身創痍の肉体をだましながら、二人は先に進んでいく。

一体マキシは、そして阿番はどうなるのだろうか?
この先、思ってもみない展開がマキシを待っていた。


第六部・完


次回へ続く。


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