Right Riot | 邦楽、サッカー、映画、猫などが好きなfkdが好き勝手に綴るブログ › samidare-makishi › 【さみだれマキシ】第25話「信念」、第26話「準備完了」
2009年09月04日
【さみだれマキシ】第25話「信念」、第26話「準備完了」
【さみだれマキシ 五部】第25話「信念」
前回はこちら
今までのお話一覧はこちら
この計画の中心となるのはマキシではなく、阿番の医療を司るアベである。
マキシに意図通り迅速にビビリ521を感染させるのも、
適量のビビリスギを用意するのもアベの能力がなければ不可能だからである。
しかしそのアベはこの計画に断固拒否した。
アベの協力なくして成功は有り得ない―
そう考えていたササキとアルはアベを呼び出し説得を開始した。
「アベ、何故協力出来ない?国家の問題だ、嫌では済まされぬ」
「アル、出来ないものは出来ない」
アベは一呼吸置いて続けた。
「病気をわざわざ流行らせるなんて…。竹保の民も同じ人間なのに、
罪なき人をこの手で苦しめるのは出来ない!これは俺の信念だ」
「それはどうだろうか」
ササキが口を挟んだ。アベは言い返す。
「だってそうだろ?下手したら死人だって出る!
竹保の民は分けも分からず苦しむんだ。
俺は医者だ。医者は民を苦しみから解放するのが仕事だ!」
「そうだ。だからこそ今回の計画には意味がある」
「ササキ、お前らしくない、はなしていることが矛盾しているぞ!」
「………少し長い話になるがアベ、聞いてくれ…」
ササキは視線を落として話始めた。
「昔のことです。私には妹がおりました。
母の命と交換で産まれてきたかけがえのない妹でした。
その妹は4年前に他界しました。
それは『ミクロミヂンコ』という一部で流行った感染病にかかってしまったためです。
私は深い悲しみの淵へ落ちました」
「!?それならばなぜ感染病をはやらせるというのだ?
自身で感染病の恐怖を体験しているのに!」
「体験しているからこそです。死を無駄にすること、それはもっとも愚かな事です。
妹は生と死の狭間で私にこう話しました。
戦争がなければ私は死ななかったかもしれない。
病気はなくならない、けど戦争はなくせる。
大事なのは感染病が流行ったとき、手を繋ぎあい病気と戦うことだ。
人間と戦うのでは何も産み出せない。
私の死を無駄にしないで。
戦争のために病気で死んでしまう人は私で終わりにして。
そうして妹は命を落としました」
「ササキ、しかし感染病を竹保に流行らせるのは
その妹さんの意思に反するのではないか?」
アベは至極当然の疑問をササキにぶつけた。
ササキはこう続けた。
「今はとにかく戦争を終らせるのが全てです。
戦争を終わらせて協力し合い病気と戦うことが一番の死者を出さない近道です。
そのために迅速な取引をして同盟を結ぶのです。
取引が成立してもしなくてもビビリスギを提供して一人の死者も出させはしません」
アルはうなづきながら口を挟んだ。
「そうか、なるほどな。感染病を流行らせるのに民を根絶やしにして国力を落とす、
という狙いはまったくない、同盟さえ結べればいい、と言いたいのだな」
「その通りです。確かにビビリ521を流行らすのは今は道徳に反するでしょう。
竹保のたくさんの民を苦しめるでしょう。
しかし結果的に多くの人に生き残って未来を明るいものにしてほしいのです。
過去を無駄にしないでほしいのです。
妹のためにも、アベ、ここは一つ協力してくれませんか?
これが、私の信念であり、アベの信念と違うとは思えません。」
アベは笑いながら答えた。
「…そこまで言われて断ると思うか?」
【さみだれマキシ 五部】 第26話「準備完了」
アベは協力することを決めると、すぐに準備を始めた。
マキシはすでに感染している人と二人きりの密室に数時間閉じ込められた。
ビビリ521は元々感染力が非常に高いため、マキシに感染するのは容易である。
その間にアベはビビリスギを調合しておく。
ビビリスギの調合は数年たった今でも非常に難しいとされているが、
アベの能力をもってすれば簡単である。
マキシは密室に入ってから10時間ほどで体に違和感を覚えた。
今まで体験したことのないダルさであった。
そう、無事にマキシはビビリ521に感染したのだ!
(無事に、というのもおかしな話ではあるが)
マキシは感染したとはいえ、まだ常人では考えられないほどの力を発揮出来る。
(ビビリ521は感染力は高いが重い病気ではないためでもある)
ビビリスギの準備も完了し、マキシはすぐに竹保へと送られる。
この計画には迅速さが不可欠である。
なぜなら、マキシはビビリスギにどんどん侵されていってしまうからだ。
マキシが動けなくなっては計画は成り立たない。
マキシに与えられた時間は約一週間ほどであった。
計画は、まずマキシが竹保の医者に行くことから始まる。
何故なら医者にいる人は弱っているために免疫力が普通の人よりないからである。
感染はかなり早いだろう。
そして一部に広まったところでマキシは自分用のビビリスギを使い完治させる。
ここまででおそらく五日前後。そしてマキシ自身が竹保の城に出向き、手紙を渡す。
もちろん内容は交換条件である。
そこから先は全てマキシにかかっている。
期間の一週間というのは、死者が出ないことが保証された期間である。
そう、この感染者に死者が出てはいけないのだ。
普通ビビリスギではあまり死者はでないが、
最初に医者で感染させるために弱っている人が感染してしまい危険が増すためである。
ついにマキシは阿番を旅立つ。阿番はマキシに全てを委ねる形となった。
失敗は阿番の破滅を意味する。
戦争は何も産み出さない。
だが戦争は起こり続ける。
マキシを乗せた矛盾と葛藤の滑車は、
絶望と希望で出来た道をただひたすら進んでいった。
第五部・完
次回へ続く。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
この記事はどうでしたか?


Posted by fkd at 20:00│Comments(0)
│samidare-makishi
最新記事
カテゴリー
life (77)
music (56)
sports (22)
movie (8)
book (7)
hobby (22)
memory (3)
評価シリーズ (8)
dreams (1)
other (3)
ちょっと、作詞してもいいですか? (5)
キャッチコピー (14)
art (7)
ねこ。 (30)
web (6)
ネタ (41)
food (12)
どうぶつ (4)
インテリア (20)
広告 (7)
お知らせ (2)
総集編 (4)
cooking (1)
samidare-makishi (44)
ファッション (1)
絵本 (1)
ぽむ (2)
コラム (4)
デザイン (4)
ご当地サイダー (6)
photo (1)
過去記事
最近のコメント
Annett Yun / 男は8.2秒で恋に落ち、女は野・・・
Tanesha Langton / 男は8.2秒で恋に落ち、女は野・・・
Ismael Benge / 男は8.2秒で恋に落ち、女は野・・・
Federico Lording / 男は8.2秒で恋に落ち、女は野・・・
Dawn Barrallier / 男は8.2秒で恋に落ち、女は野・・・
お気に入り
アクセスカウンタ
読者登録
ブログ内検索