くるりアルバム「魂のゆくえ」ほぼ全曲レビュー!

fkd

2009年06月19日 20:00

くるり、魂のゆくえのレビューをやってしまえ



どうも、fkdです。
fkdの成分のうちおそらく5パーセントは占めるであろう、
くるりから新譜が届きました。
その名も「魂のゆくえ」でございます。



というわけで語らずにはいられませんので、
満足いくまで語らせていただきます。笑


Yahoo!ミュージックのインタビューから一部内容をお借りしています。


かなり評価が高いアルバムみたいで



案の定このアルバムも前作「ワルツを踊れ」と同じく
賛否両論が巻き起こっているわけですが、
前作に比べるとだいぶ賛同する意見が多いようです。

このアルバムのコンセプトはタイトル通り、
「魂と向き合う」こと。
素直に、あるがままの姿を、
ただひたすら実直に歌い続けたアルバムです。

それは、メディアのインタビュー内容からもわかります。
・歌に気持ちを入れるとか、歌詞が届くように歌うことに気持ちがいってた
・完成度うんぬんとかもよくわからないし、あまり気にしていない
・今回は自分がいいと思ってるものをすごく伝えたかったり、そこの動機が大きかった。それこそ、もうインディーズのときに近い
・1回、自分が何なのか?っていうのに立ち返る時期っていうか、自分のためにしかアルバムを作ってないのかな、というアルバムを作りたかった

Yahoo!ミュージックのインタビューから一部引用


魂と向き合うことは非常に苦しくて、
恥ずかしくて、誰もが避けたくなることです。

しかし、このタイミングで一度向き合わないとくるりはくるりではなくなってしまう。
そんな予感から、いわば必要に駆られて産み出されたアルバムなのです。

アルバム収録曲はどれも
出来立てほやほやのマンジュウのように柔らかくて、
扱い方を間違えたらすぐに壊れてしまいそうなほど。
くるりというアーティストとしてではなく、
岸田繁と佐藤征史という人間がこれでもかとさらけ出されています。

前作があれほど批判されたのは、
理論武装で固めすぎたからということもあるでしょう。
今回は一切武装は無しです。

で、全曲レビュー



前置きはこれくらいにして、
久しぶりに全曲レビューさせていただきます。

今回のアルバムはアンテナやワルツを踊れのように
これといった軸があるわけではありません。
強いて言えばアルバムを通じて自由なことくらいです。

ということで、アルバムとしてのレビューではなく、
1曲1曲のレビューが適切かと思います。
というわけで、シングルはあえて外してアルバム曲のみ、
気合いを入れてレビューしていきたいと思います。

※注意!!!
あくまで個人的な感想ですので、
そういう聴き方もありだなと上から目線で見てくださいね。
音楽の聴き方は人それぞれ、否定することだけはやめましょう。


それでは、
どうぞ!

#1:LV45

team rockで出された名曲「LV30」が15レベル上がって再登場。

優しいように聴こえてめちゃくちゃひねくれている曲調。
ワルツを踊れの面影は何一つなく、
さよならストレンジャーまでさかのぼらないと近しい曲が見当たらない。

そう、このメロディーはまだがむしゃらだったあの日のくるりのものだ。

もっくん元気かな

とはいえ、あの頃とは圧倒的に奥行きも表現力も技術も桁違い。
その差がレベル15という表現か、にくいぜくるり。

オルタナって、こういうものだぜ。
岸田は背中で語る。

#3:太陽のブルース

どこまでも叙情的で、くるりが刹那的な感情を
よくここまで書いたなぁと驚かされる曲。
忘れることや、振り返ることをこれほど書いた歌詞は初めて見たし、
こんなに優しくてセンチな編曲も久しぶりだ。

そういった意味では東京を上回る、
(いや、最新版東京といったほうが正しいだろうか、)
くるり新時代のターニングポイントともいえる
重要な一曲ではないだろうか。


#4:夜汽車

さよならストレンジャーっぽいが、
さよならストレンジャーのときでは絶対にこんな曲は出来なかったであろう、
新旧くるりが見事に交錯した曲。

世武さんの軽快なキーボード、
佐藤さんの羽毛のようなベース、
岸田さんの楽しげな声とギター。

音楽ってこんなにいいもんだぜ、としみじみ感じさせられる。
はやくライブで聴いて幸せな気分に浸りたい。

#5:リルレロ

このアルバムの自由さを一番表しているのがこのリルレロだろう。
タイトルからもわかる通り、何の意味もない自由な歌詞が、
ハードボイルドなメロディーにドッキング。凄い。

今作は曲とメロディーと歌詞が一緒に出てくることが
多かったという話もあるが、
リルレロは間違いなくそのエピソードがぴったりな曲であろう。
心の底から生み出されたかのような叫び、
岸田ワールド全開だ。

暴力的だけど実は統制されているこの感じ、
くるりはやっぱりすごい。


#6:つらいことばかり

リルレロの勢いそのまま、少しNIKKIとワルツを踊れの流れも汲みつつの
80年代ネガティブアッパーチューン。

マイナーコードでマイナーな歌詞なのに、なんですかこの爽快感は。
これも新旧くるりが見事にこんにちは、
くるり現時点での完成系なんじゃなかろうか。
シングルカットしたほうがいいよ、これ。

まるで夫婦でグチり合うかのような、
世武とさん岸田さんの掛け合いが気持ちよくて思わず笑顔になってしまう。
オーイエー、つらかろうが。
超名曲。

しかし、世武さんのキーボード、
本当に表現力がすさまじい。。すてきすぎる。


ピーナッツが出た後すぐアルバム「おうちはどこ?」を購入したが、
インストのアルバムを聴いてあんなに感動したのは久しぶりだった。
くるり抜きにして、お勧め。

このアルバムは全編に世武さんの鍵盤や声が登場するのだけど、
それぞれの曲で大きなポイントになっていて、
世武さんのアルバムといっても過言ではないくらい存在感を示している。
超一流の鍵盤が聴けるなんて、なんてお得なアルバム。。。

※7/27追記
  つらいことばかりのキーボードは三柴理さんでした、
  リコシェさんありがとうございます!


#9:Natsuno

NIKKIの虹色の天使を思い出すような、
くるりらしからぬ優しいメロディー。
(そういえば、虹色の天使が出た時も衝撃だった。)

ありふれたメロディーといってしまえばそうなのだが、
このアルバムにおいてバランスをさりげなくとっている1曲で、
実は一番岸田の心臓に近い1曲なのでは・・・?
とも思える。

非常に内容が濃い一曲で、
おそらくじっくり聴かれると岸田さんは恥ずかしくなってしまうよ、
これは。

#10:デルタ

歌に気持ちを入れるとか、歌詞が届くように歌うことに気持ちがいってた


インタビューにてこんなことを言っていたが、
デルタは岸田繁の魂そのものだ。
とにかく歌詞がきれいで、一語一句をこんなに丁寧に歌うのは
くるりではあり得なかったことではないだろうか?

赤いものがテーマの曲、
よくよく見ればジャケットも赤い果物、
このアルバムの唯一のコンセプトは赤なのかもしれない。

血、心臓、情熱、赤はとても生々しい色。


赤を表現することは、魂を歌うことそのものなのかもしれない。


  「真っ赤なスカーフ」
  「真っ赤な嘘もにんじんみたいにバターで煮詰めて食べてしまえ」
  「夕日はいつも君を泣かせてばかりだな」
  「とてもでかい太陽が君を溶かしてしまうのさ」
  「真っ赤なベロを出して」

岸田繁は、どこまでも現実的なロマンチストだと、
ちょっと感動してしまった。

魂のゆくえと並んで、
アルバムのコンセプトを語る重要な1曲である。

#11:魂のゆくえ

跳ねるように軽快なリズム、とにかく真っすぐなメロディー。
そして、印象深い歌詞。

この曲は、くるりの決意そのものだ。
今後くるりが迷った時、行き詰った時、
この曲が道しるべとなるだろう。

「輝かしい未来は 胸の中で咲く花のよう
そこで揺れたものは 魂のゆくえと呼ばないか?」


くるりからこんな曲が聴けるなんて、夢にも思わなかった。
このアルバムは、この曲を聴くためだけに買ってもいい。

#12:ベベブ

ザッツオルタナ!
ズンズン鳴り響くベースに、きたぞ60sのギターソロ。
言葉遊びの中にちりばめたエッセンス。

向井秋徳とは全然違うけど、やっぱり同じだ。
オルタナは、そっちの方へ向かっていけ!

#13:背骨

この曲、太い、ぶっとい!
背骨を刺激するグルーブがカッコいい!
そしてどこまでもポジティブな歌詞。

この背骨まで聴き続けると、
プロデューサーの佐藤さんが一人で考えたという曲順が
見事すぎることに気づく。

このアルバムで一番かっこいい曲を
さりげなく最後に持ってくるあたりも、センスが良すぎる。

背骨と言うタイトルの曲を
さりげなく最後にもってくるあたりも、センスが良すぎる。

やっぱり、くるりすげえ



ということで、「魂のゆくえ」ほぼ全曲レビュー、
いかがでしたでしょうか。
暑苦しすぎてうざかったと思います。笑

こうして全曲をレビューして思うのは、
このアルバムの恐るべき統一感と、
くるりのすさまじさ。

ここまでの統一感が出せたのは、
佐藤さんのプロデュース力もさることながら、
何も統一感を出そうとしなかった、
繕わなかったことが一番の要因なのではないでしょうか?


そして、くるりのやってきたことが間違いでなかったから、
ここまでのクオリティが出せたのだと確信します。

偶然ではこのアルバムは生み出せないのです。
くるりは、やっぱりすごかったのです。


すごいぞくるり

べた褒めしすぎやろ、と思われるかもしれませんが、
本当に素晴らしい出来のアルバムですので、
ぜひみなさまも聴いてみてくださいね!

それでは、
んちゃ。

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